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「神のやしろを想う 鹿島神宮・香取神宮編」続き

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 佐原市街に戻る。戻る道も当然約4キロほどはあるのだが、自転車の強み故に苦もなく戻る。途中で八坂神社が目に付く。自転車を置く場所を迷ってしまったが、神社の隣がなぜか派出所。故にその裏に駐輪して参拝する。祭神は 素戔嗚尊。この社殿は天保15年(1844年)の改築だと言うがそのころは「感応天王」と呼ばれ、神仏分離で「八坂神社」となったという。そういわれると不思議なものでお寺さんの様な気もしてくる。隣には「山車会館」というのがあり、祭の様子をしることができる博物館のようなものがあるが入館料が400円とのこと。当然私は入らない。窓口の親父が私を待っているのもわかったが、素知らぬ顔で、参拝したら次へと進む。

 私が、自転車で駆け抜けている通りは余程たいした通りらしい。なんでも平成8年に関東地方で初めて国から選定された「重要伝統的建造物群保存地区」だという。言われてみれば、納得。江戸・明治・大正の街の息吹がそこかしこに感じられる。私も思わず見とれてしまったものがあった。「正文堂書店」という本屋。この本屋は明治13年(1880年)建築というから驚きである。

佐原八坂
佐原市内八坂神社

粋な本屋さん
佐原市内「正文堂書店」 見てのとおり粋です

忠敬旧家
奥の建物が「伊能忠敬旧家」

佐原諏訪
佐原市内諏訪神社

 
 「忠敬橋」というもっともらしい橋から川に沿って行くと「樋橋」という橋がある。私がそこに行ったときには何名かがカメラやビデオを構えているのでなにが始まるのかと思っていると、「じゃあ、じゃあ、じゃあ、じゃじゃあ」という感じで、橋から落水していた。なんでも30分間隔で落ちているらしく、この音が「残したい日本の音風景100選」に選ばれているという。なんか不思議な街だった。この川岸の橋のたもとに「伊能忠敬旧宅」がある。寛政5年(1793年)に忠敬自身が設計した建築で国指定史跡。入場は無料らしいので迷わず侵入。まあ、侵入しても中にはなにもなく、展示物は「記念館」にあるという寸法だから無料なのだろう。その展示館は対岸に豪壮な感じで鎮座。入場は500円ということで当然私は遠慮する。なによりも金をかけるのが嫌いであるし、伊能忠敬をこれ以上知ってもメリットがなさそうだから、回避するにかぎる。
 まだ、時間がある。駅前でもらった地図と一緒に「酒蔵見学」の無料案内をいただいたが、無料といえども「酒造り」を見学してなにかになるのかということでこれも回避。
 「重要伝統的建造物群保存地区」という仰々しい地域を自転車で流しながら、次の場所を決める。手頃な距離に「諏訪神社」があった。この後におよんでまだ神社に行くのかという気もしないでもないが、この隣の公園には「伊能忠敬像」もあるらしいので一石二鳥的に向かう。

 「諏訪神社」。本格的な神社らしく、参道は暗く長く、そして目の前には急な石段が控えていた。今日はいろいろ急坂があったが、この石段はいちだんとひどく、肩で息をしながら登る。あいかわらず誰もいない。私の行く先々はおおかた誰もいない。いるのは有名な場所だけで、佐原市内にも観光バスやマイカーでくるような人間多数いたが、その同じ市内を観光している人間共はどこをうろついているのか不思議でしょうがない。
 「諏訪神社」の御祭神は 建御名方神(たけみなかたのかみ)。伊能家の氏神様でもあるという。道理で隣の公園に「像」があるわけだ。誰もいない、なにもない空間で柏手をこだまさせるのはかなり勇気がいることで、緊張するが、儀礼通りに参拝して山を降る。たしかにこれは山と表現すべきぐらい標高差があった。

 「公園」にはお子様連れの親子が多数くつろぎ、遊び、私はどうにも場違いなような気がしてきた。「伊能忠敬像」はすぐにみつかったが、それ以上に場違いなものを私は見つけてしまう。その空間だけ、誰も近寄らず、異様な雰囲気で直立している碑があった。説明文も何もない。その碑の建立理由等が書かれているであろう裏に回ってもみたが、私には読めなかった。ただ一カ所だけ読める箇所があった。それが「希典書」の文字。世の中広しと言っても「希典」なる名前をした人は「乃木希典」しかいないだろう。あとはなんと書かれていようが、碑の性格はわかる。人が近づかなかったのも、もっともな事である。



伊能忠敬
伊能忠敬像

 

 そろそろレンタサイクルの返却時間が迫ってきた。そこはお役所らしく午後4時まで貸し出しということになっていたので、あと30分ぐらいだった。返しに行くだけでは面白くないので景観が見事に整えられた小野川にそって駅まで向かう。途中線路と交差する。ふと思いだし、時刻表を開くと、ちょうど10分ぐらいで電車がやってくるようだった。ならば答は早い。せっかくだからここで写真を撮ろうと言うことで、回りの観光客から不審な視線を浴びつつもセッティング。鉄道趣味もわすれていなかった。


 帰り道は余興である。あとはなんにも用事がない。せっかくだから成田から成田線で常磐線に繋いで帰ることを心に決めて、有意義に活用できたレンタサイクルを返しに行くことにした。



参考文献
角川日本地名大辞典12 千葉県
角川日本地名大辞典8  茨城県
その他案内板・パンフレッド等



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