「京都の神社風景 松尾・梅宮編」
<平成15年4月参拝・平成15年12月記>
「松尾大社」/「月読神社」/「梅宮神社」
JR大津駅ちかくに宿をとっていた。この日は近江国を散策しようかと思っていたから。ただ、昨日の京都に心残りが有りすぎた。一晩考えて、結局翌朝はJR京都駅にたっていた。
行く場所は定かでなかったが、一日乗り放題バス切符を購入。方向的に松尾大社に向かうことを決定させる。
「松尾大社」 (延喜式名神大社・官幣大社・洛西鎮護総氏神・日本第一釀造神)
<京都府京都市西京区嵐山宮町鎮座・朱印>
祭神:
大山咋神
中津島姫命(=市杵島姫命)
由緒
文武天皇の大宝元年に秦忌寸都理(はたのいみきとり)が社殿を建立させたとされている。しかし松尾の神山には秦氏の社殿建立よりも古い遺跡があることから以前から奉斎神があったとされる。
古事記には「大山咋神、此の神は近淡海国の日枝山(日吉大社)に坐す。亦、葛野の松尾に坐す鳴鏑に成りませる神」とあり、神代から松尾山に坐していたとされる。
中津島姫命は宗像三神の一神。外来民族である秦氏が朝鮮との交流の為に航海安全を祈願し、当社に勧進したものであろうとされる。
秦氏は山城国における有力な土着集団であり、松尾・賀茂・稲荷の創建と関係が深く、京都の開発に貢献してきた。
朝廷の京都遷都後は崇敬篤く皇城鎮護神として崇められた。特に「賀茂の厳神、松尾の猛霊」と称された。延喜式では二座ともに名神大社列格。さらに「二十二社」では上七社に加えられ第四位。
明治四年に官幣大社列格。本社と同名社は約1200社あるという。
本殿は松尾造とする特殊なもの。応永四年(1397)の建造、天文11年(1542)の修築。国重要文化財指定。
釣殿、拝殿、中門等は江戸初期の建築。
当社は酒造の守護神としてあつく崇敬されている。
松尾社正面と阪急電鉄・・・ |
正面 |
楼門 |
松尾大社 |
舞殿 |
拝殿 |
撫で亀さん(神使の亀) |
霊水・亀の井 |
朝8時すぎ。
桂川をわたると目の前に阪急電車と松尾大社がみえる。そういえば、この北2キロが嵐山だった。嵐山は遠慮したい気分である。一方で松尾一帯は「松尾大社」「鈴虫寺」「苔寺」などがありまさに清廉さを感じさせる空気に彩られる。
神山を背景に、落ち着いた社殿を目の前に拡げてくれる。落ち着いた色合いと明るめの曇り空がより一層、幻なる気配を漂わせる。
酒の神様として有名な松尾大社。酒はないけど神泉はある。亀の井を水を口に含みつつ、境内でまどろむ。まだ朝8時すぎなので、ゆったりモードなのだ。
「月読神社」
(西区松室山添町鎮座)
祭神:月読尊
松尾大社境外摂社。式内名神大社。
書記によると顕宗天皇(487)に安倍臣(阿閉臣)事代という人物が任那から帰国した際に月読神のお告げを受けて、朝廷は壱岐県主の押見宿禰に命じて祀った古社。
押見宿禰の子孫が代々奉斎してきたが、文徳天皇斉衡三年(856)に松尾山南麓の現在地に遷座。延喜式では名神大社に列格し、神階も正一位勲一等まで進んでいたが、松尾大社の勢力下にあったために古くから松尾大社の摂社とされてきた。
月読神社 |
月読神社拝殿 |
月読神社舞殿 |
月読神社本殿 |
松尾大社から南に300メートルほど歩くと「月読神社」が鎮座している。この神社は松尾大社の境外摂社。平安の頃には延喜式内の名神大社に列格するほどの大社。
さすがに落ち着いている。なかなか「月の神さま」を祀る神社に接する機会がないので、摂社であれどもこれだけの規模を誇っている神社はかなり貴重。境内は予想以上に整っており、山を背景に樹木に覆われていて、気持ちもあいかわらずにまどろみの世界。
一度松尾大社前まで戻り、再び桂川を渡って、梅宮大社を目指す。歩ける距離に「酒造の古社」が隣接しているのが不思議でもあり、ありがたくもある。
「梅宮大社」(名神大社・官幣中社)
<京都市鎮座・朱印>
祭神
本殿四座
酒解神(大山祇神)
酒解子神(木花咲耶姫命)
大若子神(瓊々杵尊)
小若子神(彦火々出見尊、ニニギ尊の御子神)
相殿四座
橘清友(太政大臣)
橘嘉智子(清友の子、嵯峨天皇の皇后)
嵯峨天皇
仁明天皇(嵯峨天皇の御子)
由緒
橘諸兄、光明皇后の母である橘県犬養三千代が橘一族の氏神として祀ったことに始まる。その後、聖武天皇后の光明皇后が崇敬し遷座させ、さらに嵯峨天皇の皇后であった壇林皇后(橘嘉智子)によって現在地に鎮座した。壇林皇后は当社に祈願され間もなくのちの仁明天皇をお生みになったことから血脈相続・授子の神として崇敬されている。
橘逸勢の承和の変以後、橘氏は衰退。橘氏の氏神祭であった「梅宮祭」は何度か興廃し、のちに橘氏と縁が深い藤原氏がその任にあたった。
当社は酒造の神として崇敬があつい。また嵯峨天皇ゆかりで学問の神、仁明天皇ゆかりで音楽芸能の神として崇敬されている。
平安期の延喜式では名神大社。二十二社制では下八社、第十六位に列格。明治四年官幣中社列格。
梅宮大社正面 |
梅宮大社 |
楼門 |
舞殿 |
社殿 |
拝殿 |
本殿前 |
またげ石(授子のご利益有り) |
梅宮大社は阪急松尾駅から500メートルほど東に歩いたところに鎮座。住宅地の中にあり、参道脇では子どもたちがボール遊びをしていた。時間は9時15分。朝から元気な事である。
楼門は酒樽が積まれている。さすがに酒造の神。思わず喉がうなるのが気になってしまうが。境内は極めて物静か。本殿前では丁度神職さんが祝詞を捧げていた。その後で拝する私。なにやら有りがたい気分になるのは、私が単純だから。
次はどこに行こう。とにかく京都内の大きな神社を順々に巡ろう。手元のバス路線で考えると「北野天満宮」がよさだそうだ。「梅ノ宮神社前」バス停から「西大路四条」を経由して「北野天満宮前」に向かう。
参考文献
神社由緒看板及び御由緒書
神社辞典・東京堂出版
角川日本地名辞典・京都府
「北野・平野へ」
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