「東照宮めぐり」 〜上野・芝〜
<平成15年10月記>
目次・その1
「上野東照宮」/「芝東照宮」
武蔵国の神社も有名どころから参拝していったので、だんだんと私の行き場も地味になってくる。それでも「武蔵埼玉分館」の掲載社は99社。
なんとなく100社目の節目なので社格は高くないけど重要文化財という見応えある「上野東照宮」に行こうかと思った。
「東照宮」(上野東照宮)
(東京都台東区上野公園鎮座・国指定重要文化財)
祭神:徳川家康・徳川吉宗・徳川慶喜
寛永4年(1627)に伊賀上野藩主の藤堂高虎が、屋敷地であった上野山(藤堂藩の伊賀上野が地名の由来)に造営し、正保3年(1646)には後水尾天皇から東照宮の宮号をうけた。それ以来、家康を祀るやしろを東照宮と呼称。
慶安3年(1650)に徳川家光が社殿造替を命じ、慶長4年4月に現在の社殿が完成。本殿・拝殿・唐門・透塀が当時の建築であり、国指定重要文化財。他に銅灯籠50基と寛永10年(1633)寄進の石造明神鳥居も国重文。
(拝殿・幣殿・本殿・唐門・透塀は明治四〇年に旧国宝指定)
境内入口・石鳥居(国重文) |
参道入口(水舎門) |
東照宮境内
澄み渡る秋晴れが神社探訪に心地よい
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唐門(国重文)−慶安4年(1651)造
柱には忍ばず池の水を飲みに行ったとされる
左甚五郎作昇り龍・降り龍がある |
銅灯籠(国重文)
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唐門(唐破風造り四脚門)を内側から臨む
日本唯一の金箔唐門 |
境内の栄誉権現。四国八〇八狸の総帥。
他を抜く(たぬき)強運開祖として崇敬されている。
・・・つまり狸を祀っているわけです
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拝殿(国重文)
日本にふたつしかない金色堂として有名 |
拝殿
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本殿
本殿内部に家康・吉宗・寒松院・天海の神体を祀る |
上野公園をつきぬけ、脇目もふらずに東照宮を目指す。公園内は人に溢れるも、東照宮の石鳥居をぬけ境内へと足を踏み入れると不思議と人の気配が途絶える。たしかに上野公園内でも東照宮の世間的イメージは薄いのだろう。私もその気がなければまずは立ち寄らない神社だろし。
すがすがすい秋晴れの下で参道を歩く。石灯籠に圧倒されつつ、正面に社殿を臨む。その両脇には銅灯籠。唐門前で手を合わせるも、楽しくなってくる。この唐門を眺めるだけで、今日の参拝は大成功の気配が漂う。
昇殿参拝券を購入して、さらに足を踏み入れる。受付の人に「朱印はありますか」と尋ねるも「朱印はやっていないのです」と応対され、なんとなく意気消沈ではあったが、この金箔にかこまれた社殿に心を躍らせる。
拝殿脇からぐるぐると回って、秀麗な彫刻をあきることなくめぐって、そして本殿内部に足を踏み入れる。
今、この瞬間。だれもいない本殿内部。
まさしく神域たる空間に、張りつめた空間に私がひとり。ただ、神の気配と対座する。
ひさしぶりに緊張感あふれる気配。おごそかなる空間のなかで、大まじめに参拝を行う。私が大まじめなのもかなりひさしぶり。
しかし、真面目になるだけの価値は大いにあった。
少なくとも都内で見応えのある神社は?と聴かれたら「平日午前中の上野東照宮」と私は答えるだろう。それぐらいに、この空間が気に入ってしまった。
ただ、誰もいない空間を上野という好立地空間でそうそう味わうことは難しいだろうが。
「芝東照宮」
(東京都港区芝公園鎮座・郷社)
祭神:徳川家康
末社:丸山稲荷
当初、増上寺に勧請されていた。増上寺は天正一八年(1590)に江戸入府して以来の徳川氏の菩提寺。
元和二年(1616)に徳川家康が薨去されると、増上寺にて法要が行われ、増上寺境内に家康を祀る廟が建立され「安国殿」と称された。
安国殿の御神体は六〇歳時の家康の姿を彫刻した等身大の像であるという。
寛永一八年(1641)には家光によって造替がなされ、丸山の地に移された。
明治六年、郷社列格。
大正四年には旧国宝に指定されたが、昭和二〇年五月二五日の空襲により豪華絢爛を誇っていた社殿が焼失。わずかに公孫樹と御神像だけが残った。
昭和四四年、新たに社殿造営。
境内 |
境内風景 |
社殿 |
公孫樹(徳川家光手植えという) |
増上寺三解脱門(国重文) |
増上寺本堂と東京電波塔 |
上野東照宮だけで満足であったが、時間があるので芝東照宮にもいってみようと思い立つ。
さすがに上野をみたあとの選択肢としてはかなり間違っていたようで、あっという間に参拝終了。芝東照宮から垣間見る増上寺のバカバカしいまでに大きく、それでいて私の目には空虚に見える本堂がかなしげだった。
丸山古墳の軽く見学して、その隣の運動場で幼稚園の運動会が盛大に行われているのをほほえましく苦笑しつつ眺めつつ、増上寺もかすめておく。
もっとも国重文だとはまったく知らなかった三解脱門をぬけて、馬鹿でかい本堂と東京タワーを遠望したら、もういいやになって引っ返してきたが。
どうも、寺院になると急に冷めてしまう私の心がけに苦笑ものではあるが。
さらに帰り際に「芝大神宮」で朱印を頂戴して、今日の参拝はおしまい。
<参考文献>
神社由緒書き
郷土資料事典・13東京都・人文社
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