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「８月１５日の雨〜靖國神社の風景〜」
＜平成１５年８月１５日撮影＞
関東地方は大雨だつた。
雨も半端な氣持ちではなく、大まじめに降り續いてゐた。
毎年毎年、お決まりの樣な青空の下で眩しいばかりの日の光を浴びて頭を垂れてゐた。かはることのないセミの声を聴きながら玉音に耳を傾け、先人たちの勞苦を偲んでゐた。魂達と會話をしてゐた。
今年は雨だつた。まるで靖國神社を取り卷く環境を具現化するかの樣な大雨だつた。丁度「大雨洪水警報」が發令されるほどの大雨。この雨は何を暗示してゐるのだらうか？
朝の九時。いつものとほりに參拜をする。
雨ゆゑに人が少ないだらうとの豫想を立ててゐた。しかし靖國を想ふ氣持ちには天候は關係なかつた。豫想以上に人影があつた。この事實だけでもうれしかつた。極々一般の人びとに溢れる境内。異常な馬鹿騷ぎもなく、しづしづと雨の音だけが響き渡る。本來の參拜はかうあるべきなのだらう。今までが異常すぎたのだ。
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７枚は９時から１０時頃に撮影。
この時間帯ならそんなに込合つてゐない。 |
９時すぎ。雨であれどもいつもどほりの參拜をすます。祈念の日でもあるので朱印を戴く。朱印を待つてゐるあひだ、毎年來てゐるといふおばあさんと傘をさしつつ立ち話。
「雨が降るなんて珍しいねえ」「ホントですね」
拜殿をバックにおばあさんの寫眞を撮つて差し上げる。ちいさな心の交流だつた。
１０時になると舞殿まへで鳩に祈りを込める。
毎年恒例のことながら、みたことはなかつた。今までは賑やかな街宣車を追いかけたりしてゐたので心がざわめいてゐた。
靖國の湯澤宮司の挨拶と共に心を込めて白鳩を飛ばす。白鳩に想ひを寄せて飛ばす。
「英靈、ありがたうとう！」「ありがたう！」
単純明快な心であつた。たつた一言でもこれ以上はないといふ究極の一言。
心から言葉に出して「ありがたう」を連呼する。
御免なさい。寫眞ぶれてゐます 湯澤宮司さんです |
白鳩に想ひを込めて |
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１０時３０分に集合だつたらしい。毎年、靖國で會つてゐる仲間達。そんなことも忘れて境内に佇む私。
靖國会館に早く來い、といふ呼び出し電話の為に社殿から離れる。
昨年、私たちは靖國会館で「もんぺ姿の女学生」を拜見した。そして今年、私たちは「従軍看護婦」を拜見する。なにやら夢うつつの世界を見たかの樣な空氣。様々な想ひが交錯する日でもあつた。人それぞれの表現と共に。
靖國は雨でも同じ表情であつた。雨ゆゑに味はひ深い表情でもあつた。こんな８月１５日。
まるで秋の例大祭のやうなもの悲しく、それでゐて嚴肅な空氣が境内を包んでゐた。
１２時の默祷。それぞれの想ひが交錯する。
雨の靖國神社。こんなにも想ひを込める人びとがゐる。
天から泣いてゐるやうな雨音に身體をまかせながら、静かに鎮魂する。魂の共鳴とともに。
まつりのやうな騷ぎはなかつた。しづしづとした「靖國の杜」。神社といふ気配を久し振りに感じる。
雨は何を物語つてゐるのだらうか。
「靖國」といふ符号と「８月１５日」といふ符号。
ただの雨であれども、符号を重ねる。
葦原瑞穂國に宿る精靈たち。日本國を愛した御靈たち。
未知なる想ひはなにを傳へようとしてゐたのだらうか。
ただ泣きたくなるやうな氣分に私は包まれてゐた。
静かな參拜。静かな靖國。
平成１５年８月１５日
雨の靖國神社は、早くも秋の氣配が濃厚であつた。
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＊今年は石原都知事の出迎へは到着殿まへの改修工事フェンスと警備厳重のために不可能でした。
＊ちなみに巨大掲示板團體は１００名を越す人数を集めたが、さほどの活動はできなかつた模樣。統制力が弱く段取りが惡かつたとのこと。まあ、あの雨では致し方がないだらう。
＊境内では日章旗をライターで燃やした男が取り押さへられるといふことも在つたらしいが未見。
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