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「奥州伊達郡をゆく〜阿武急沿線の宮詣で〜 その5・飯坂」


<平成17年9月参拝・11月記載>

その1・霊山 「伊達郡を想う」「信夫山」「阿武隈急行」「掛田駅」「霊山神社」
その2・保原 「保原町」「保原ノ天照神明宮」「保原ノ厳島神社」
その3・高子 「奥州伊達氏発祥の地」「高子ノ亀岡八幡神社」
その4・梁川 「梁川」「伊達政宗・持宗の乱」「伊達天文大乱」「梁川ノ亀岡八幡神社」「梁川天神社」
その5・飯坂 「福島交通飯坂線」「鯖湖神社」「飯坂ノ八幡神社


福島交通飯坂線
福島駅から福島交通飯坂線に乗り込む。16時前に飯坂温泉駅に到着。もはや夕方、なんとなく終点にきてみたけれども、なんとなくであった。さしあたり神社はあるらしいので行ってみる。

福島交通飯坂線は全長10.4キロの私鉄。所要は約25分。開業当初は飯坂温泉への湯治客誘致を目的として敷設。大正9年に飯坂軌道株式会社が設立され、その後に福島飯坂電気軌道株式会社、さらに飯坂電車株式会社となった。昭和2年に飯坂温泉駅が開業。信達地方の福島電気鉄道株式会社と合併。昭和46年に伊達郡各地を結んでいた電車路線が廃止され、飯坂線のみが存続。

福島交通
福島駅・福島交通
福島交通
飯坂温泉前の「温泉玉子」と「松尾芭蕉」
福島交通
飯坂温泉駅
福島交通
飯坂温泉駅

福島交通の電車は、ちょうど「義経」仕様になっていた。なんでも沿線の「医王寺」は佐藤兄弟の菩提寺であるゆえの義経だったりする。また近世には松尾芭蕉も訪れている。私はもっとも神社に用事があるので、医王寺に足を運ぶゆとりはない。
そんなこんなで飯坂温泉駅。何度も来たことがあるので、そんなに感慨は深くない。
駅のすぐ脇を摺上川(すりあげ川)が流れる。
まったく方向は違うけれども、おなじ「摺上」の語感から伊達政宗が南奥州の覇権を黒川芦名氏と争った磐梯山麓猪苗代の「摺上原の戦い」を思いおこしつつ、川をながめて温泉街独特の気配を楽しむ。
駅から300メートルほど北東に歩く。のんきな街並み。その先には小さな神社があった。



鯖湖神社
(福島県福島市飯坂町湯沢鎮座)

鯖湖は飯坂温泉発祥の地。鯖湖湯は古名を佐波来湯と呼称。説話では奥州に遠征した日本武尊(やまとたけるのみこと)の病を平癒したともされ、付近には松尾芭蕉も立ち寄ったことで知られる。
鯖湖湯の隣には鯖湖湯の神を祀ったであろう鯖湖神社、お湯かけ薬師が鎮座している。また隣には鯖湖湯の貯湯槽たる大きな樽がある。

鯖湖 鯖湖

温泉街をあるけば、その中心地らしいところに湯の神を祀っているであろう神社が目につく。そんなに社地は広くない。湯を楽しむ足湯があり、小さな参道。小さな神社と薬師様。そして大きな樽。隣には飯坂温泉の公共浴場「鯖湖湯」があるが、温泉街に来てはいるが、温泉には今日が湧かない私は、そのまま参拝をして、さらに歩む。
温泉に浸かるのは老後の楽しみで良いのだ。私にとっては温泉よりも神社で癒されるのだ。そんなわけでさりげなく次を目指す。



飯坂ノ八幡神社
(福島県福島市飯坂町八幡鎮座)


祭神:誉田別命・息長足姫命・玉依姫命

飯坂温泉地区の総鎮守。
創建年代は不詳。平安時代後期の天喜4年(1056)の後三年の役で源義家が、当地にて空にたなびく雲を見てm源氏の白旗が翻ったかのように感じとり、源氏守護たる八幡大神の戦勝の神託と信じ、必勝祈願のために勧請したとされている。
宝永7年(1710)に現在地に遷座。明治4年(1871)に村社、23年(1889)に郷社に列格。
当社の秋例大祭は大阪・岸和田の『地車祭り』、秋田・角館の『飾山ばやし』とともに「日本三大けんか祭り」の異名をとる。

飯坂ノ八幡神社
境内入口
飯坂ノ八幡神社
参道
飯坂ノ八幡神社
拝殿
飯坂ノ八幡神社
本殿覆殿

福島交通飯坂線・飯坂温泉駅から歩けば約500メートルほど北東の地に鎮座している。温泉街、そして住宅街のなか。
訪れた時間は夕方4時過ぎ。あたたかい日差しを残しつつ、太陽は夕日の鋭い光を社地に照らしていた。
予想以上に大きい神社。境内参道はすがすがしく延びており、その先の社殿と後方の山並みの調和のバランスが印象深い。

唐突なようだけど、私はこの神社を実は存じている。なぜなら私の家と宮司家が遠戚になるらしい。私の父親は面識があるようだが、あいにくにして私は面識がないし、そのうえ予定外で唐突に参拝に来ただけなので、名乗り上げをしても致し方がない。
毎年、神道家らしい年賀状を父宛に送ってきているので、脳内的には親しみを感じているのだが、まあ私は関係ないと言えば関係ない。

そんなわけで参拝して、温泉街の匂いを嗅ぎながら駅に戻る。のんびりした温泉街は好きな方ではあるが、私の事情もある。
本来、福島に一泊するべき事なのではあるが、郷里たる福島の本家はいろいろとゴタゴタしているので、私の立ち入る余地がない。そんなわけで懐かしい福島を満喫しつつ、里心を抱くきつつも、私はただの旅人となる。

一気に北上をして、本日の宿は盛岡に確保している。盛岡城趾のほど近く。そんなわけで福島伊達編は幕引き。
盛岡編はまたのちほど。


参考文献
保原町史・第一巻 通史
案内看板、由緒書き等。
神社辞典・東京堂出版
角川日本地名大辞典

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