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「靖國神社を想ふ・第56回みたままつり 7月13日編」


目次
靖國神社
新遊就館
靖國の神輿
軍歌の夕べ


「靖國神社」
 すつかり失念してゐた。「靖國神社みたままつり」があるといふことを。基本的には私は「まつり」には興味はない。第一、人が大勢集まつて、特に無知なる若者が群れをなして馬鹿騷ぎをしてゐる中に行くのは好きではない。「神社」といふ神聖なる空間が汚されるやうで、毎年この時期は神社に行くのを控へてゐる。
 ただ、今年は何となく考へが違つた。靖國信仰といふものに真剣に考へ想ひを巡らした私は今にして「まつり」の意義がわかつたやうな気がする。そして「遊就館」。昨年から新裝工事が行なはれてゐた「遊就館」が今日7月13日から一般公開される。どうあつても私は「靖國の社」に行かなくてはいけないやうであつた。


 地下鉄都営新宿線「九段下駅」。到着は18時15分位であつた。
 大鳥居前。予想通りの光景が広がる。むやみやたらと騷がしい。屋台が乱立し、人が行き交ふ。この瞬間が嫌だつた。ただ、この光景は覚悟済み。私の感性では「まつり」が嫌ひであれども、神社の神様がそんな「まつり」の光景を鑑賞なされ、楽しまれればそれにこしたことはない。

 絶えることのない拝殿前で、人並み以上に長い参拝を終へるとさしあたつては暇になる。まつりとはいへども、屋台には興味はなく、神輿までも時間がある。第一、まだ日も高く、名物の「提灯」は覇気がない。まずは、予定どほりに新「遊就館」に行かうかと思ふ。


遊就館
 驚くほど人にあふれてゐる遊就館。いつもの癖で「遊就館本館」に足が赴くも本館には入口がない。近寄りたくないやうなぐらゐ、雑踏としてゐるガラス張りの「別館」が入口のやうだ。ガラスの先には「零式艦上戦闘機」が見える。
 中にはいると新入りの「零戦」に、「カノン砲」や「泰面鉄道蒸気機関車」等の、これまで靖國境内に野外展示(いはば放置)されてゐた遺品の数々が室内に手厚く展示されてゐる。
 どうにもらしくない。なんか騒がしい。初日とまつりが重なり遊就館らしくない若者や家族連れが多い。そして「神社」らしい空気は微塵にも感じられない。どこかのテーマパークのやうな雰囲気で茶店や売店があり、受付がある。受付には黄色くカラフルな衣装を着た受付嬢。もはや私は途方に暮れて受付で訊ねる。「遊就館の入館料金はどこで払ふのか」と。すぐ隣の券売機で買ふのがわかるが、値段があがつてゐることもわかつた。これまで大人500円であつたのが800円になつてゐる。新装の元を回収するための値上げであるのは納得できるが、これから先を心配してしまふ。何でもない平日にどれだけの参拝客が足を運んでくれるか、と。まるで東京国立博物館のやうな空間で感じてしまふ。

 入場ゲートは自動改札であつた。ただし使ひ方は当然誰もわからないのでここにも受付孃がゐる。效率が良いのか悪いのかわからない。
 最初のブース。これまでの遊就館では控へめであつた「武人の心」「武の歴史」のコーナー。展示方法は、まさに国立博物館のやうな雰囲気で圧倒される。どうやら「遊就館」は本格的な「博物館」を目指してゐるという空気が感じられる。
 この先はおなじみの展示品の数々。旧「遊就館」では見られなかつた展示物も多い。さらには詳細な解説が多く、これは生半可な気持ちでは相対できる代物ではなかつた。
 今日は、人が多すぎる。私は新装の雰囲気を味わひたいがために来た。目的は達せられただらう。新「遊就館」の詳細な見物は気持ちを入れ直して、心静かに行ふことにしたいと思ふ。
 新「遊就館」は一応撮影禁止らしい。ただ旧「遊就館」では撮影ができた(旧も禁止だつたのかもしれないが)ので、そのままの空気で撮影を行なつてゐる人が多い。私も実は撮影をしてしまつた。しかし禁止といふからには館内の写真は公表できないだらう。ゆゑに館内の写真掲載は控へたいと思ふ。御了承を・・・。ただし、エントランスの「零戦」等は入館料を払ふ前に展示してあるので撮影は可能。ただかなり撮影がしにくい場所に置いてあるのはさすがといふべきか。悔しいのは、あまりの騒々しさに「零戦」の出自を聞くのを忘れてしまつたこと。次の参拝ではきちんと確認したいと思ふ。(詳細はこちら


 *撮影禁止だけれども、写真を撮る人間多し(苦笑)
 *ネット上にも掲載されていますので、どうしても興味のある人は自力で探してみてください。
 *私は撮影禁止ゾーンの写真を公開する気はありませんが・・・。


 新「遊就館」で「遊就館友の会」の入会受付をしてゐたので話を伺つてみる。どうやら「靖國神社崇敬奉賛会」の下部組織らしい。特別会員(相当な高額納入をした人)、維持会員(年間五万円以上)、正会員(三千円)賛助会員(千円)、学生会員(二十五歳以下で千円)といふ格付けになつてゐる。会員特典はいろいろあるが大差はないらしい。受付で伺ふと二十五歳以下なら「友の会」で良いらしい。・・・即断で入会。問題は私のやうな若人(?)がどれだけ今後、靖國を支へられるかといふことにあるだらう。裏を返せば、それだけ靖國を支へてきた遺族の方々の御苦労がきつくなつたといふことなのだから。

遊就館本館
遊就館本館
遊就館新館
遊就館新館
蒸気機関車と零戦
蒸気機関車と零戦
零式艦上戦闘機(型は調べるのを忘却/苦笑)
零式艦上戦闘機



靖國の神輿
 参道に戻る。こちらは独特のまつり空気一色。この神社らしい感覚とは、正反対であらう「みたま」の感覚がなにやらをかしく、かつありがたい。我々がまつりを楽しむ。それは賑やかであればあるほどによい。後世の我々が世を楽しめば楽しむほど、前世の「みたま」たちもうれしかろう。「まつり」を楽しみ、「まつり」でまつる。まつりを楽しむものが、たとへ「靖國の英霊」を意識してをらずとも、英霊にはこの想ひが伝はるはずである。私のやうな人間が「英霊」を想ひつつまつりを意識するやうに・・・。

参道
参道
靖國みこしで賑はう参道
靖國みこしで賑はう参道
参道(みこし光りすぎ・笑)
参道(みこし光りすぎ・笑)
熱いをとこたちの宴
熱いをとこたちの宴



「軍歌の夕べ」
 舞殿の前で千修吹奏楽団による奉納演奏が行われてゐる。唄を聞きつつ酔ひしれる。感涙をさそう唄たちに涙する。しらずにしらずに雨も降り始め、まさにみたまの涙が降りしきる中で唄を聴く。不覚にも「ああモンテンルパの夜は更けて」では本気で泣きたくなつてしまつた。歌ひ手である下谷隆行さんの解説(モンテルンパで刑死なされた軍人たちにまつはるエピソード)が胸に痛いかつた。
 参考までに演奏曲目をあげておく。

「海ゆかば」(合唱)
「戦友」(演奏)
「露営の歌」
「麦と兵隊」
「父よあなたは強かつた」
「出征兵士を送る歌」
「暁に祈る」
「梅と兵隊」
「明日はおたちか」
「九段の母」
「軍艦行進曲」(演奏)
「空の神兵」
「若鷹の歌」
「燃ゆる大空」
「加藤隼戦闘隊」
「ラバウル海軍航空隊」
「ああ紅の血は燃ゆる」
「異国の丘」
「ああモンテルンパの夜は更けて」
「愛国の花」
「同期の桜」(合唱)

 舞殿前で異様に盛り上がる空間。そんななかに混じり一緒になつて唄をうたつてゐる私。こんな私は23歳。果たしてこんな私はどうなのだらう(笑)。

 この唄を聴くためだけでもまた来たいと思ふ。この唄たち。英霊たちも唄つたであらう唄を皆で唄うことが、なによりもうれしかろうとの想ひを込めて。


 全曲を唄ひ終へた後に燈籠などを見物して歩く。こんなに人が多い靖國もうれしい。八月十五日のやうな異常な感覚でもなく、ごく普通の人びとが楽しんでゐる靖國がうれしい。淡く光る燈籠たちに囲まれるなかで、幾多の想ひが交錯する。人それぞれが願ふ「靖國の想ひ」が・・・。

闇に消えゆく拝殿
闇に消えゆく拝殿
いろどられる燈籠
いろどられる燈籠
小林よしのり氏奉納ぼんぼり
小林よしのり氏奉納ぼんぼり
敬愛する小堀桂一郎先生の奉納ぼんぼり(万葉集巻六より)
敬愛する小堀桂一郎先生の奉納ぼんぼり
(万葉集巻六より)




あとがき。
 このあと、帰路に就いたのは九時三十分すぎ。夜の「靖國」、まつりの「やすくに」。雨に降られた七月十三日の「みたままつり」は、なにやら楽しいやうなかなしいやうな、不思議な感覚にとらはれてゐた。
 今回は、「正仮名」で書いてみました。いまだ正仮名は勉強中なので、間違つた使ひ方をしてゐるかもしれません。御了承下さい。

 また靖國は「みたままつり」開催中にさまざまな催し物が行なはれてゐます。詳細は「靖國神社」のサイトでご確認下さい。私がここで記した内容はあくまで一部ですので。

寫眞はすべて平成14年7月13日撮影
(PENTAX MZ-3+TAMRON AF ASPHERICAL LD
F1:3.8-5.6 28-200mmを使用)



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